なんでかなんて、知らないよ。

でももう、どうでもいいんだよ、そんなの。


だって私たち。

兄妹なんだしさ。





その日の朝に更新されたノベルで、トワが手に入れたのは、小さな女の子と男の子の間で交わされた“ありがとう”だった。

女の子の大切にしていたピアノに大きな傷をつけてしまった男の子。

女の子は、怒って、悲しんで、泣いて泣いて。

だけど男の子は、謝らなかった。


ただ、ピアノばかりかまってないで、自分とも遊んでほしかっただけだった。

ピアノはいいなあ、毎日弾いて、磨いてもらえて。

そんなことを思っているうちに、ふとしたはずみで傷をつけてしまっただけだった。


女の子は、悲しすぎて、許せなかった。

男の子も、悲しすぎて謝れなかった。



そこまで読み返して、自室のPCを閉じた。

これはもう、なんだか痛すぎて読めない。


結局このあと、男の子が正直に全部話して、謝るのがストーリーだ。

いいな子供は、勇敢で。

うらやましく思いながら机を離れて、ベッドに転がった。

ずっと昔から使い続けている、ピンクのキルトのベッドカバーに、ほころびを見つける。



『僕は、これからもずっと、この傷を見るたびに、ごめんねって思うから』



男の子が、涙を我慢しながら言う台詞。



『だから、たまにでいいから、もういいよって言ってね、怒ってないよって。それだけで僕、ほんとに苦しくなくなるから』



これはある人が、過去の記憶をもとに投稿したエピソードで、当の本人まで、子供の素直さには驚きます、なんて書いてた。



素直なのは、子供だからってだけなんだろうか。

ほんとに?



『また僕と話してくれて、ありがとう』