ガサガサ…とマイバッグの音を立てながら帰り道を急いでいた。

職員会議があったお陰で、いつもよりも帰りが遅くなってしまった。



(あの人、どうしているだろう…)


家の中に残してきた腹ペコアオムシのことが気にかかる。

お昼は簡単な物を準備しておいたけれど、それだけで満たされるようなお腹ではない筈だ。


(だからって、勝手にあれこれ食べられても困るし……)



やはり1人にさせるんじゃなかった。

明日は何があっても外へ出てもらおう。




「ただいま!」


…しまった。つい習慣で……。



「おかえり。遅かったな」


爽やかな笑顔で迎えられた。


こっちはかなり焦って帰ったのに、どうしてそんなに爽やかでいられるんだ。



(この家の主人は私でしょう!?あんたは客!何でそんなに態度が大っきいの!)


そう思うのに何故か言い訳がましく説明してしまった。


「職員会議があって遅くなってしまいました。直ぐにご飯にしますから」


どうしてこの男のご機嫌とりみたいなことをしている?

相手はこの家に勝手に居るんだから、平気でいればいいのに……。



「飯は急がなくていいよ。それより此処を見てくれ!」


はしゃぐ子供のような顔つきで手招きされる。

既にこの時点から向こうのペースにハマっている。



「……何よ」


「じゃ~ん!!」


音楽を口にして扉を開けると、そこには見違えるような美しさに変わった物置が……。