忌明けの翌日、玄関チャイムが鳴り響いた。



「はーい!」


近所の方が来られたのかと思い、扉を開けてみると………



「こんにちは。初めまして。高島組です」


「たかとうぐみ……?」



ヤクザ屋さんですか?…と聞くには風貌が違う。


頭にはタオルを巻いて、作業着のようなツナギを着ている。

色は無難なベージュカラーで、頭に巻いたフェイスタオルはブルー。


私よりも頭二つ分くらい背の高い男は、四角張った顔をしている。



「何屋さんですか?」


押し売りもセールスも間に合ってます…と伝えると、思いがけない答えが……。



「左官屋です。おたくの外壁のペンキ、随分剥がれてますよね」


「…サカン?…ペンキ?」


左官なんて仕事にこれまで縁がなかったから、全くピンとこなかった。

ついでに言うなら家の外壁なんて、じっくり見たこともなければ気にしたこともない。



「ふぅん…それがどうかしました?」


剥がれてても住めますよ。ついでに何も困らない。



「外壁は大事です。きちんと塗っておかないと家が外から腐ってしまう」


何の意味があって脅すのか。

最近流行りの『オレオレ詐欺』ならぬ『カベカベ詐欺』?



「間に合ってます。ほっといて」


「さよーなら」…と扉を閉めかけたら、「待てっ!」と足先を突っ込まれた。



「な…何するんですか!?」