「はい」


「俺だよ。ケンイチ」


あたしはのぞき穴からその姿を確認して、ケンイチを家に上げた。


玄関を閉じて鍵を閉めた瞬間、ケンイチはあたしの体を抱きしめてきた。


「あの日からずっと会いたいと思っていたよ」


ケンイチが耳元でそう囁く。


馴れた感じだ。


「あたしもだよ」


あたしはそう返事をして、ケンイチの背中に自分の腕を回した。


ケンイチの息はすでに荒く、あたしの背中を撫でる。


「なぁ、もう待てない」


「ちょっと待って。お風呂くらい入ろうよ」


あたしはそう言い、ケンイチから身を離した。


ケンイチはお預けをくらった犬のような顔をしてあたしを見ている。


もちろん、ケンイチと関係を持つつもりなんてこれっぽちもなかった。


「背中、流してあげるから」


あたしがそう言うと、ケンイチはすぐに鼻の下を伸ばしていやらしい顔に変わる。