ガリッ!


と音がして、朝日の左腕が血を吹いた。


朝日は表情を歪めるが目を閉じたまま微動だにしない。


たった一度肉を裂いただけなのに血があちこちに飛び散ってあたしは小さく悲鳴を上げていた。


ノコギリで人間を切断するというのは、こんなにも恐ろしい事なのか。


柔らかな肉は粉々に避けてノコギリにへばりついている。


「や……やっぱり無理だよ!!」


あたしはそう言い、手からノコギリを落としてしまった。


続いて脱衣所へ向かいバスタオルを持ってくると朝日の腕に押し当てた。


「……彩花?」


朝日が驚いたように目を見開く。


「ごめん。ごめんね朝日!」


あたしはなんて事をしてしまったのだろう。


必死で傷口を押さえても腕の血はとめどなく流れ、なかなか止まらない。


涙で視界は滲み、気が付けばしゃくり上げて泣いていた。


「彩花、いいんだよ。それが彩花のやらなきゃいけない事なんだから!!」


朝日が止血しようとしているあたしの手を振り払う。


「でも……!」


「俺を殺さなきゃ、彩花まで殺される。もうわかってるんだろ?」


朝日の言葉にあたしはグッと返事に詰まった。


「だって……あたしは朝日の事が好きになっちゃったんだもん……」