それでもお腹は空いているだろうと思い、インスタントのお粥を温める事にした。


2つ分のお粥をレンジで温めてスプーンと一緒にテーブルに運んでも、男はまだ玄関先に座ったままだった。


「早く来ないと冷めちゃうよ?」


そう声をかけると、男はおずおずと立ち上がりキッチンへとやってきた。


長時間同じ体制でいたためか、足元もふらついている。


「どうぞ」


男を椅子に座らせてお粥を差し出すと、お琴がゴクリと唾を飲み込む音が聞こえて来た。


やっぱり、何も食べていないようだ。


いつから食べていないのかはわからないけれど、箱に詰められてからは一切口にしていないはずだ。


それでも男は自分からスプーンを握ろうとしなくて、仕方なくあたしは自分のスプーンを手に取った。


「いただきます」


わざと大きな声でそう言い、お粥を食べた。


すると男は同じようにスプーンを手に持ち、お粥をひと口食べた。


お粥が喉を通る音が聞こえた後は、まるでなにかに取りつかれているかのようにお粥を口に運び始めた。