あたしはそう思い、男の腕に触れた。


その瞬間、男がひどく怯えた表情を浮かべたのであたしは手を止めた。


「なに? どうしたの?」


「いや……」


そう言うが、あたしと視線を合わせようとしない。


それ所か、あたしを恐ろしい人間だとでもいうように震え始めたのだ。


「ねぇ、あたしはあなたを攻撃する気はないから、安心して?」


できるだけ優しい口調でそう言い、拘束している縄をほどいた。


男はしばらく両腕に痛みを我慢するように顔をしかめていたが、徐々に慣れて来て「ありがとう」と、小さな声で言った。


それから何を質問しても男の答えは曖昧で、どうしてこうなったのかもわからな
い状況だった。


男は大きな声で助けを呼ぶこともなく、この家から逃げる事もなく、ただあたしのそばにいた。


警察へ通報した方がいいと言う事はわかっているのだけれど、サイトの画像と文字を見てしまったあたしは動けないままだった。


「とにかく、何か食べる?」


あたしは男にそう聞いて立ち上がった。


男はチラリとあたしを見ただけで、何も言わない。