「ちょっと待ってて」


あたしは急いでキッチンへと向かいコップに水をそそいで戻ってきた。


水を飲ませると男はようやく生き返ったというように大きく目を見開いた。


「あなたは誰?」


少し男が落ちついたのを確認してあたしはまた同じ質問をした。


「……わからない」


「わからない?」


あたしは聞き返す。


「覚えてないんだ」


「自分の名前も? どうして自分がこうなったかも、わからないの?」


「あぁ……」


男は弱弱しく頷く。


どうしよう。


これじゃぁなにもわからないままだ。


でも、とにかくこの男の拘束を解いてあげないと。