「あなた、なにか言い忘れてることってないかしら?」


すでにタクシーに乗っているお父さんんへ向かって、お母さんが聞く。


「特にないんじゃないか?」


お父さんは首を傾げてそう答えた。


「そうかしら? なんだか、忘れているような、胸騒ぎがするんだけど……」


「彩花はもう17歳だぞ。お前が思っているより子供じゃない。大丈夫だ」


お父さんは呆れたようにそう言った。


「そうだよ。お母さんは少し心配し過ぎなんだから」


それに、そんなに心配ならあたしも一緒にヨーロッパ旅行に行きたいくらいだ。


絶対にダメを言われるから、言わないけれど。


「そうかしら? それなら、彩花を信じて出かける事にするわ」


「そうだよ、あたしを信じて」


そう言うと、お母さんはあたしを気にしながらもタクシーに乗り込んだ。


「じゃぁね、行ってらっしゃい!」


ようやく進み始めてタクシーへ向けてあたしは大きく手を振ったのだった。