ドアを開いた瞬間、異臭が鼻を刺激してあたしは顔をしかめた。


生臭いような、なんとも言えないすごい臭いがしている。


「なにこの臭いは……」


そう言った瞬間、教卓の上に置かれている黒いビニール袋に気が付いた。


登校して来ていた生徒たちの視線が一斉にあたしに集まる。


黒板には大きな文字で【松谷彩花は大ウソつきだ】と書かれている。


あたしの名前……!?


そう思った瞬間、サッと血の気が引いていくのを感じていた。


まさか、この袋……。


心臓は何倍もの速さで脈打ち、全身から冷や汗が噴き出す。


そっと教卓へ近づいてみると、袋の1つは開けられていることがわかった。


誰かが開けて中身を確認したのだろう。


その中には血まみれになったケンイチの顔が見えた。


あたしは自分の体が小刻みに震えていることに気が付いた。


みんなの視線があたしに突き刺さる。


「ち、違うよ……?」


情けないくらいに震えた声。


一番最初に言い訳を口走ってしまったことで、みんなの視線が疑いの目に変わる。