その言葉にあたしは返事ができなくなってしまった。


お父さんとお母さんの2人が一か月も家にいないと言う事が今までなかったし、そんな素敵な旅行に参加できないという悔しさが込み上げて来る。


「大丈夫よ、お土産はちゃんと買ってくるから」


お母さんはそう言い、楽しそうに鼻歌を歌い始めた。


「旅行っていつから行くの?」


「3日後の朝からよ」


「そんなに早く!?」


「お父さんのお休みが今じゃなきゃとれないのよ。少し急かなって話もしたんだけど、これを逃したら死ぬまでヨーロッパ旅行なんて……」


さっきと同じセリフを繰り返すお母さん。


お父さんはすでに休みを取っていると言う事は、今日まであたしには秘密にしていたと言う事だ。


確かに一か月間も学校を休んで行くことはできないけれど、もっと早く教えてくれたらよかったのに。


そう思い、あたしはふくれっ面をしたのだった。