あたしは指から流れ出る血に視線を落として「あたしが……殺したの」と、呟くように言った。


「どうして!?」


「この人、朝日と身長やスタイルが似ていたから……」


そう言うと、朝日は見開いた目を更に見開き、「俺のため……?」と、聞いて来た


あたしは小さく頷く。


半分は朝日のため。


半分は自分のためだ。


2人が生き残るためにどうすればいいか。


その決断がこれだった。


「ありがとう、彩花」


朝日の言葉にあたしは驚いて顔を上げた。


朝日は穏やかなほほ笑みを浮かべている。


「え……?」


「俺の身代わりを探してきてくれて、1人でこんなにも頑張って……」


朝日があたしに近づいてきて、血の出ている左手を握りしめた。


「朝日は……あたしのやってることを責めないの?」


「どうして責めるんだ? 彩花は俺を守ろうとしてくれてるんじゃないか」


そう言い、朝日は人差し指をペロリとなめた。


朝日の舌に真っ赤な血がつく。


「俺も手伝うよ。でもその前に手当てしないとな」


朝日はいつもと変わらぬ様子でそう言ったのだった。