濃紺のスーツにネクタイ。 笑うと少し皺の寄った口元に、優しげな瞳。 あたしと同じように、キャリーバックを引いている。 あたしは今日、彼と同じ飛行機に乗っていた。 彼は副操縦士だった。 これまでにも数回、アメリカ行きの路線で会ったことがある。 彼はパイロットの 「竹本さん」 だったのだ。 竹本さんは人のいい笑顔であたしに言う。 「今日もお疲れ様」 「お疲れ様です」 あたしは、竹本さんに頭を下げていた。