兄が殺された。


いつもは照れくさくていえないけど本人以外の前ではお兄ちゃんと呼んでいるんだ。


いつもは照れくさくてはね除けてるけど、本当はとても嬉しいんだ。


本当は大好きなのにいつもいえないんだ。


でも、一度だけ素直になったことがあるね。


私は言ったんだ


「愛してる。」


そしたら何故かお兄ちゃんは顔を真っ赤にして


「ありがとう、俺も愛してるよ。」


と言って


私を優しく抱いてくれたね。


この日しかいえなかったけど


この日しか出来なかったけど


一度でも良かった。


それがよかったのか、


悪かったのか


私は


妊娠してしまったんだ。


検査に病院へ行くとき


私は何者かに刺されそうになったんだ。


お兄ちゃんは妊娠を知ってるからか、


それとも妹だからか


一夜だけど愛したからか、


それとも


愛していた人だからか


ここにはいないはずなのに


突然現れて


私をかばって刺されてしまったんだ。


そのときお兄ちゃんは


「ありがとう、俺はずっと愛してるよ。」


と最後まで苦痛の笑みは見せずに


穏やかで、


何事もなかったかのような


笑顔を浮かべて


死んでいったんだ。