「鍵貰うだけだから、尾木さんどこいる?邪魔しないタイミングでもらうから」

「…あぁ、えっと、ちょっと尾木くん外してるんだ。春ちゃん、お店で待っててくれる?なるべくすぐ届けるからさ」

「…わかった。亮祐、暇なら寄ってくか?」

「おぉ、寄る寄る!チョコばあちゃんのとこでお菓子買ってきていいか?」

「お~」

「尾木!お前も行くぞ!」

「え、で、でも僕お金が…」

「大丈夫だって、アイスくらいおごってやるからな!」

 亮祐くんが尾木くんの弟を強引に連れて行く。

 そのあとに続こうとした春馬を、袖を引っ張って引き留める。

「なに?」

「尾木くんって、家大変だったりする?」

「…あんま言わないけど、多分そうだと思う。竹刀とか全部お下がりだし、電車台かかるときとか来ないし」

「…そっか」

 尾木くんはもしかして家のために…?

「あ、秋奈さんなんですか!?」

「え?そうだぞ」

「マジですか!亮祐先輩、ちょっと離してください!」

 弟くんが亮祐くんを振り切ってこっちに走ってくる。

 私の前で止まった弟くんは、いきなり頭を下げた。