私は、エレベーターで恋に落ちる



「見ただけで、何で分かるんですか?」


「やってるかどうかなんか分かるだろう、そんなもん」
自信たっぷりに答える。

この男、最低だ。


「分かんないでしょう?そんなの。伊村さん、そんなに女性経験あるんですか?」


「いいか、人間ってのは、関心があればそっちを向くんだよ。男だって女だっておんなじだ。本当に相手を思ってるなら、こうやってお互いの目を見て、見つめあうだろう?」
彼の顔が、近づいてきた。

タイミングは最悪だ。

きっと、さっきより酷い顔してる。

彼の視線が、さっきまで泣きはらして、多分、かなりの可能性で、ぐちゃぐちゃになってると思われる私の顔に注がれている。

百歩譲ったって。
間違ってロマンティックな気分にならない。

この顔で見つめ返したら、確実に幻滅するだろうな。

だから、私は、じいっと下を向いたままでいた。


「まあ、どっちもどっち。あの二人、お似合いだろう」
彼が言う。

「そんなはずない……」
いくら何でも、一緒なんかじゃない。

「でも、あの子、俺に電話番号、知らせて来たぜ」

「番号教えたんですか?」


「相手なんかするか。無視するに決まってるだろう?だいたい、俺の好みじゃない」

「伊村さん、好みなんかあったんですか?」

「お前、俺のこと、何だと思ってる?ホントいつも、ひでぇ扱いするなあ」