「俺も、泣き止めなんて言ってないぞ」
言葉もぶっきらぼうだし。
いらないっていうときに、ふわっと優しく抱きしめて来るし。
「だから、悲しくないって……」
気を使ってくれるけど、なぜかズレてるし。
「わかったよ」
すぐに投げ出すし。
どこがいいんだろう。
伊村さんに抱えられて、人の流れから外れていく。
私と伊村さんは、目立たないベンチに座らせて、二人が行き過ぎるのを見守った。
「落ち着いたか?」
「はい。息だけはしてます……」
しゃっくりは止まったけど、顔はひどいことになってるだろうな。
「あの子、ちゃんと彼氏いるんだな」
伊村さんは、下を向くことなくじっと観察しながら言う。
「彼氏?」
実際に、見たあとだって。
こんなふうに、証拠を突き付けられたあとだって、戸田さんがルナの彼氏だなんて認めたくない。
例え、彼がルナと一緒にゾンビに成り下がったって。
「どう見ても、他人じゃないぜ」
腕組みして、自信ありそうに答える。
「どこが慰めようとしてるのよ」
やっぱり、この人は無神経だ。


