私は、エレベーターで恋に落ちる



「俺も、泣き止めなんて言ってないぞ」
言葉もぶっきらぼうだし。

いらないっていうときに、ふわっと優しく抱きしめて来るし。


「だから、悲しくないって……」
気を使ってくれるけど、なぜかズレてるし。

「わかったよ」
すぐに投げ出すし。

どこがいいんだろう。

伊村さんに抱えられて、人の流れから外れていく。

私と伊村さんは、目立たないベンチに座らせて、二人が行き過ぎるのを見守った。


「落ち着いたか?」


「はい。息だけはしてます……」

しゃっくりは止まったけど、顔はひどいことになってるだろうな。


「あの子、ちゃんと彼氏いるんだな」

伊村さんは、下を向くことなくじっと観察しながら言う。

「彼氏?」

実際に、見たあとだって。

こんなふうに、証拠を突き付けられたあとだって、戸田さんがルナの彼氏だなんて認めたくない。

例え、彼がルナと一緒にゾンビに成り下がったって。


「どう見ても、他人じゃないぜ」
腕組みして、自信ありそうに答える。

「どこが慰めようとしてるのよ」

やっぱり、この人は無神経だ。