「時間だ。行かなきゃ」
伊村さんは、私の話を無視するみたいに時計を見る。

「これが終われば、報告も終わる?」

「そうだね。そのつもりだよ」
彼は、あっさりと答えた。

「だったら、早く済ませてしまいましょう」

エレベーターで時間を計り、画像をチェックする。


一階について、また時間を計る。

私は、伊村さんがタブレット端末を閉じるのを待っていう。

「これで、終わりでいいのかな」


「残念ながら、まだだよ。君は、まっすぐ帰っていない日もある」
私は、彼の腕を振りほどいた。

「まっすぐ帰ってない?ショッピングしただけじゃないの」

「一応、それも記録に残されてるからな。まず、1階と2階にある商業施設から」

彼は、すでにそっちの方に体を向けている。

「何やってるのこれ?」

伊村さんは、端末を見ながら、私が寄り道した店の順番を確認してる。

「別にいじゃないの。どの店をどんな順番でショッピングしようとも」
すでに、彼は笑いだしている。

「並んでる順に、ひとつずつ見て行った方が効率的だろう?
なんで、あっちに行ったり、こっちに戻ったり、上にいってまた下に戻るわけ?」

歩いた後を確認しながら、半ばあきれて言う彼。

「誰も付き合わせてるわけじゃないし、
同じような商品があったら、前に見たものも気になって、戻っただけじゃないの」

「だとしても、信じらんない。
ウィンドウショッピングしながら、
ダイエットのためにウォーキングしてるって、正直に言えよ」

「もう、いいでしょ?
笑いたければ、笑いなさいよ。
気に入ったブーツ一つ見つけるのだって、こっちは真剣なんだから。
つべこべ言わずに、歩くなら歩きましょうよ」

「わかったよ」