私は、エレベーターで恋に落ちる

しばらく、彼の椅子に腰かけ時計を見ながら待っていた。

目の前の、パソコンのモニターが付けっぱなしになっていて、マウスを少しいじったら、画面が急に明るくなった。

だんだん浮かび上がる画像に、目が釘付けになる。

「何これ……」

エレベーターの中で撮られた防犯カメラの写真だ。

鮮明なのと、そうでもないのといろいろある。

けれど、みんな同じアングルから撮られた写真だった。

私と伊村さんが抱き合って写っている。

一番前に、大きく表示されてる写真が一番目立っていた。

こっちは、もっと切羽詰まっていた。

唇と唇が触れあってるのが、はっきりわかる。

何してるんだろう。
仕事中に見てる写真としては、相応しくない。


もう一度、マウスをいじると伊村さんが受け取ったメールの中身が表示された。

メールには、写真が添付されていて、メッセージが添えられている。


――この写真でいいと思う。
もしも、彼女の方がこっちを訴えてきたら、この写真を根拠に、彼女とは恋愛関係にあるからと答えればいい。

さらに追伸とあって

――お前、いくら訴訟に備えてとはいえ、白昼堂々と、通りすがりの女にこんなふうにキスができるな

送信者の名字の後に、弁護士榎田と書かれていた。


私は、コンピュータの画像を全部消してやりたいと思った。

ハンマーがここに置いてあったら、間違いなく叩いて壊してたかもしれない。