私は、エレベーターで恋に落ちる

ドタドタっと、振動が伝わって来た。

課長が慌ててやって来た。

喫茶コーナーまで呼びに来て、美穂との話は途中で中断した。

美穂が、そんなに走ったら心臓止まっちゃいますよと冗談を言う。

「篠原さん、横田さんから電話入ってるよ」
息を切らせながら課長が言う。

「横田さんですか?」

「電話中に、君と代わってくれって、言われたんでね」

「そうですか……」

また、文句が言いい足りなかったとか。
最後に、言いたかったこと言ってやるとか?

どっちにしろ、いいことじゃなさそうだけど。

代わって欲しいって言うなら、仕方がない。

保留になっていた、外線のボタンを押す。

「もしもし、お電話代わりました」

「ああ、篠原さん?久し振りだね」
社長のだみ声が聞こえて来た。

「はい」

良い話じゃない。
そう思ってたから、返事も消えそうな、消極的な声になる。

「ありがとうな」シンプルな言葉だった。

「へ?」

「一生懸命やってくれたのに、上手くまとまらなくてすまんな」

「一生懸命って……」そう思ってたんですか?

「文句は言ったけど、してくれたことに対しては頑張ってるなって思ってたってこと伝えたくてな」

「社長さん?」

「えっと。篠原さん、こっちがなんか言うと、頑張ってくれちゃうんで、ついわがままになっちゃって、すまんかったな」

「いいえ。お客様のほうも、精一杯の予算で何とかしようという気持ちはよくわかりますから」

「君に甘えすぎたかな。担当かえられちゃったし、どうも話もこじれちゃって結局あきらめることになっちゃって。君には感謝してる。それだけ言いたくてな」

「そんなことないです。また、何かあったらよろしくお願いします」
私は、丁寧に頭を下げた。