「そこでですね。今日から検証作業に入ったところなんですが、検証作業をしている間、もうしばらく篠原さんを私共にお貸いただきたいのですが……」
「篠原が、ですか?」
「はい」
「どうぞ。お好きなように。煮るなり、焼くなりと」
課長が、資料に赤ペンを入れながら言った。
伊村さんがくすっと笑った。
たまらず私は口を挟む。
「あの、私だって自分の仕事がありますし……」
「ああ、仕事ならルナ君が頑張ってるから、心配ない」
目を上げずに課長が言う。
私は、目を見張った。
冗談じゃない。
契約前にルナなんかに渡したら、絶対に上手くいかない。
「ルナ?冗談でしょう。引き継ぎも何もやってないし」
「引き継ぎなんか、いらんだろう。資料見ればわかるし、戸田君もついてる」
「戸田さん!これから、ずっとルナが戸田さんに付くんですか?」
最悪だ。
「これからって、もう、早速始めてるけど」
「そんな」
今まで続けてきたことが、パーになる。


