私は、エレベーターで恋に落ちる

「すっかり仲良くなって、よかったですね」
爽やかに笑顔を振りまく林田さん。

「いいもんか」
彼が気を取られてるうちに、思いっきり顔を手のひらで強く押した。

「痛ってぇ」

押したところが、赤くなっている。

「記録、取れましたか?」

林田さんは、私たちに構わず、言うべきことを言う。


目の前で起こってること、まったく気にしない林田さん。

「ああ、なんとかね」気のない返事をする伊村さん。

「ちゃんと、下の階にいってフロアに入るところまで、取ってくださいね」

「わかってるって」


伊村さんは、私を先に歩かせた。

私は、彼の手が届かない、適度な距離を保って歩く。

彼は私の後について非常階段を通り、会社のオフィスまでついてきた。


誰かに会いに来たわけでもなく、私に話しかけるのでもない。

オフィスについてから、時間を確認し、タブレット端末に何か書き込んでいた。

自分の世界に入り込んで仕事をしている伊村さんに言う。


「会社まで来たんだし、ついでに溜まった仕事をしてもいいですか?」

「ん?」伊村さんが顔をあげた。

そう言った時、林田さんが遅れてうちの会社にやって来た。