私は、エレベーターで恋に落ちる

「せっかくですが、私にも仕事があります」

って、今何時だっけ。

うわっ、軽く30分は過ぎてるじゃないの!

「これで失礼します!」
私は立ち上がって、会議室を出ようとした。
長い腕が伸びて来て、私の腕をつかんだ。

「待て、まだ駄目だって言ってるだろう?」と、伊村さん。

通り抜けようと思ったけれど、彼は、私を捕まえたままだ。

「お言葉ですが、伊村さんに私を引き留める理由はないでしょう?」
手を出しても勝ち目がない。代わりに、言葉で反論する。


「そうですよ。すでに、監禁、暴行罪レベルの罪を犯してますからね」
林田さんが味方してくれた。

「冗談じゃない、誰のせいでこんなことになったんだよ。お前、脱獄したんだから手順ぐらい説明しとけ」

「脱獄?」

「まあ、システムの隙間をすり抜けて、盲点を突いたわけですから」

「ちょっと待って。私は、脱獄なんて考えてた訳じゃなくて……
ただ、エレベーターにカードをかざしただけで、他には何もしてない」

「システムの盲点じゃない。人為的なミスだ」伊村さんが向きになる。

「どっちにしろ、篠原さんに協力を依頼しないとね。伊村さん、あくまでもお願いですよ。お願いですからね」と主任さん。

「くそっ」

「何でもいいけど、電話一本入れさせてください」