私は、エレベーターで恋に落ちる

壁にかかった時計が、ちょうど1時を告げていた。

まずい本当に。帰らなきゃ。

私は、ピンと背筋を伸ばした。

本気でまずい。

オフィスに帰って、すぐにお客さんのところに電話をしなければ。

問題が大きくなって、こじれたら課長のお説教だけじゃすまなくなる。


「確認してくる」

伊村っていう方の男じゃない方が、私の社員証を持ったまま、部屋を出て行った。

私は、悪魔男と二人っきりで部屋に残されてる。


男二人は、可能性は限りなく低いけど、男一人なら何とかなるのかも。

課長に散々絞られた上に、始末書を書かされる事と、目の前の悪魔を倒す事。

そのうちの、どっちがあり得ないか考える。

言うまでもない。
倒すのは、悪魔だ。

彼が、ドアの近くに立った時、ちょうどいい距離感になった。

私は、彼に気付かれないように、すっと立ち上がって、距離を置く。
助走をつけて、勢いよく突進した。

運よく、不意を突いたみたいに男に体当たりできた。

彼は、うわっという声とともに、ふらついて壁に当たった。

やった。

成功だ。

今だ、とばかりにドアに手をかけ、部屋を出なきゃ。

ドアノブに手をかけ、ガチャガチャしてるところに、
いきなり、何かにぶつけられた。

今度は、私が暴力男に体当たりを食らって、壁に押し付けられた。