「こんなの嫌です!!」
思いっきり、手を振り切ると、ゆるくつかんでいた男の手が外れた。
私は、一目散に駆け出そうとした。
非常階段めがけて。
「おい!どこ行くんだ」
けど、逃げられたのは数メートルで、すぐに捕まった。
今度は、手首をぎゅっとつかまれた。
彼に手をつながれて、彼と並んで歩かされた。
彼は、私を連れて行くと、受付嬢の前を憮然として通り抜けた。
受付嬢がやって来て、好奇心の混じった目で言った。
「伊村さん、どうかしたんですか?」
「どうもしない」
伊村さんと呼ばれた男は、憮然として答える。
普通なら、か弱い女性を引きずるようにしてるんだから、私に同情が集まってもいいのに。
同じ女性である受付嬢も、この乱暴男の味方だった。
「誰か呼びましょうか?」
何て言いながら、この男と真顔で話している。


