私は、エレベーターで恋に落ちる



彼に肩を叩かれて、エレベーターから降りるように言われた。

まごついていたら、もう一度降りるように言われて、今度は背中に手を添えられて押された。

私は、急に恐ろしくなって、その場で立ちすくんでしまった。

「どうしよう……私……」

彼も、私と同じように立ち止まる。


「どうしようだって?誰かに相談したいの?」

私は、違いますと必死で首を振る。

いったい、自分がどうなっちゃうのか、不安になった。

そもそも、何でこんなに厳しい目で睨みつけられるのか分からない。

間違ったエレベーターに乗ってしまっただけなら、すみませんって謝ればいいと思ってた。

もうしませんと頭を下げれば大丈夫だと思ってた。

それじゃ済まないってこと?

「だって、すぐに戻らないと遅刻しちゃう」

多分、今頃、お昼の1時になる頃だ。

すぐに、お客さんに確認の電話を入れなければならないのに。

どうしよう。


「遅刻だって?見え透いた嘘なんかつくんじゃない」
彼の声が、急に大きくなった。