それに……
なんだか、目が熱っぽい。真剣な目だ。
これは、離れた方がいい。
私の本能が、逃げろと教えてくれる。
よく考えて。
この人のせいで、ビルの屋上なんかに行っちゃったのよ。
死ぬほど寒かったの忘れたの?
さりげなく彼から距離を置こう。
でも、あからさまに避けるのは、気が引ける。
何しろ、誰にも知らせていない私の行動に、彼が気が付かなければ、閉じ込められた蠅のように、私はまだあそこにいる。
彼は、私の危機を救ってくれたんだ。
一瞬、彼に対して同情的な気持ちになった。
「えっ?」
体が揺れてバランスを崩した。
すきを狙われて、気付いたら彼の腕の中におさまっていた。
向こうも、こっち行動などとっくにお見通しだった。
「伊村さん、ちょっと待って……」
行動が分からないのは、あなたも一緒ですって!
なんで、いきなりキスなんかしてるんですか?


