私は、エレベーターで恋に落ちる


それに……

なんだか、目が熱っぽい。真剣な目だ。

これは、離れた方がいい。

私の本能が、逃げろと教えてくれる。

よく考えて。

この人のせいで、ビルの屋上なんかに行っちゃったのよ。

死ぬほど寒かったの忘れたの?


さりげなく彼から距離を置こう。

でも、あからさまに避けるのは、気が引ける。

何しろ、誰にも知らせていない私の行動に、彼が気が付かなければ、閉じ込められた蠅のように、私はまだあそこにいる。

彼は、私の危機を救ってくれたんだ。

一瞬、彼に対して同情的な気持ちになった。

「えっ?」

体が揺れてバランスを崩した。

すきを狙われて、気付いたら彼の腕の中におさまっていた。


向こうも、こっち行動などとっくにお見通しだった。



「伊村さん、ちょっと待って……」

行動が分からないのは、あなたも一緒ですって!


なんで、いきなりキスなんかしてるんですか?