若い男の人が、エレベーターに駆け込んできた。
走って来て、先に乗ろうとしていた私に、ぶつかりそうになったから、危ないなあと思った。
アッパーフロアで働いている人に、こんなにあわてんぼうはいないのに。
慌てて走ってくるなんて、どんな人だろう。
私は、乗り込んで来た男を振り返って、チラッと見上げる。
やばい。目があった。
彼は、目をそらさずに私の方をじっと見ている。
中に入っても、後ろからじっと、彼は私を見てる気がする。
見られてるから、振り返って見ることはできない。
何でかわからないんだけど。
彼は、こっちを見てる。絶対に。
時々、こうしてアッパーフロアの人と乗り合わせることはあった。
ほとんどの人は、何か考え事をしてるか、エレベーターが上昇し、
フロアの階数が上がって行くのを確かめるように、停止階が表示されたランプが変わっていくのを、にらみつけるように見ている。
なので、アッパークラスのフロアに、いそうにない制服を着ている事務員が、人乗り込んでいても、彼らは気にも留めない。


