私は、エレベーターで恋に落ちる

しばらく、感傷的な気分に浸ってあの日のことを思いだしていた。

すぐに忘れることなんてできないだろうけど。

こうして思い出の後をたどっていると、少しは元気になりそうだった。



さて、下に下りようと思ってエレベーターのボタンを押したら、カードキーにまったく反応しない。

「ん?」

ゆっくりかざしてみたけれど、やっぱりダメだ。

「ええっ?」

エレベーターが来ない?

何度やっても同じだった。

ピッと反応するけれど、エレベータのボタンのランプがつかない。


だったら、非常階段を探そうと思ったら、なんと私がいる出口には、費用階段はついていなかった。多分、VIPのラウンジや、BARに通じるエレベーターの方に非常口がついている。

非常口に行くには、建物の外、このドアを開けて、もう一つのエレベーターの出入り口まで行かなければならない。

そっちが、この間伊村さんと来た時に乗ったエレベーターだ。



「あっ」

この時初めてまずいと思った。

もしかして、私、今、最悪の状況に置かれてない?

まず、

エレベーターで帰れない。ということは、エレベーターで下には降りられない。

外にも出られない。ドアが閉まっていて、非常口に出る方法がない。

携帯も圏外。さっきから、電波が入りそうな場所探してるけど、まったく入る気配もしない。
ということは、誰かに連絡して助けを呼ぶこともできない。

おまけに、ふきっさらしの風が薄い壁に当たって、ゴーゴーと音を立てている。
ここは凄く冷える。
ずっといられる場所じゃない

マジで凍死するかもしれない。