私は、エレベーターで恋に落ちる

「君がお腹一杯にするくらいこの店で食べたからって、破産なんかしないさ。俺、いくら稼いでると思う?」

「さあ」そんなこと聞いてどうするのよ。

彼は、私の反応を気にして返事を待っている。

でも、そんなことには興味がない。
だって、今日これでさようならって別れたら、関係ない人だもの。

「興味ないみたいだな。さっきのやつの年収なら、軽く一か月で稼いでやるよ」

「さっきのやつって、もしかして戸田さんの事ですか?」

「そう、あの、ノータリン」

「ひどい言い方。でも、彼は、男性社員で一応、主任だし。ああ見えて結構稼いでるのよ」

「男性社員っていうだけで、たいしたことないんだろう?
そいつがあげた実績は、君の助けがあってだろう?君のことを手放して、あの何も考えてないお姉ちゃんと組んたら、すぐにメッキがはがれるんじゃないか?」


「見てたんですか?」
私は、顔を上げて伊村さんを見る。


「よく見なくても分かるさ」
伊村さんが真顔になった。


「今日は、楽しめた?」

「ええ。十分よ」


「そう。君があの、ろくでなしのために落ち込むことないよ」

私は、声を出して笑う。
伊村さんから慰められるなんて思わなかった。

「ええ。ありがとう。おかげで戸田さんのことは、どうでも良くなった」
これは、本当だった。

その後に、もっと記憶に残る体験したんだもの。

「それは良かった」

でも、もっと忘れられない思い出が出来ちゃった。
そっちは、どうやって忘れたらいいのか分からない。