私は、エレベーターで恋に落ちる

「少しは、気が紛れたか?」
彼は、手元のナプキンで口元を拭いてから言う。

「何の事ですか?」

目がいたずらっぽく笑う。

「今、俺たちの足元で食事してるやつらの事」


「凄い傲慢な言い方」


「そのくらい言っても、罰は当たらないだろう?」

「ええ、こんなに美味しい料理を食べさせられたら、つまらないことなんて忘れてしまう」

「そうだろう?」
彼が顔を上げたので、目が合った。

「でも、食べた料理とこの店のことは忘れないな」
空になったお皿を見て言う。

「ああ。また来ればいい」

「また?誰がこういう店に連れて来てくれるんですか?めいっぱい貯金して自分一人で食べて帰るとか?」

「一人で来なくても、誰かに連れて来てもらえばいいだろう?」

「あなた以外に、誰がいるんですか?」
思わず、言ってしまった。
何てこと言ったんだろう。

「じゃあ、誘ってやるよ。そのうちにな」

でも、彼は私を無視することなくちゃんと答えてくれた。
社交辞令だと思うけど。