私は、彼から視線をずらし豪華な夢のような世界を見回した。
ピカピカに磨き上げられた床に、豪華なシャンデリア。
ホールが暗い分、正面の店の入口の照明が明るくなっている。
重々しい中に華やかさと、気品がある。
洗練された空間だった。
私は、自分だけ場違いなところに来てしまったような気分になった。
おとぎの国のお城に招かれたのに、冴えない格好のまま招待された服で来てしまった気分。
「こういうところに来るなら、前もって言っておいてくれればいいのにな」
私は、ニットのアンサンブルとそれに合わせたスカート。
どこにでも売っている、チェーンの洋服店の洋服だった。
それに、コートは暖かいだけのモコっとしたダウンコート。
まったく冴えない格好。
それに比べて、伊村さんは、ビジネスマンが着てるダークスーツじゃないけれど、どれも生地も仕立てもいい上質な服を着て、その上にきちんとジャケットとウールのコートを着ている。
「そうだったね。急で悪かった。でも、大丈夫だよ。それで十分きれいだから」
そんなふうに言われて、赤くなってしまった。


