席に着いたとたんに、その一ノ瀬くんが声をかけてきた。 仕方なく前髪の間から隣人の方を見る。 「まだ揃ってないんなら見せるよ」 無造作だけど、サラサラな髪。 大きな目、優しそうな口元。 その口元が、初対面の私に、にこっと笑顔を作ってる。 ……なんだ、このひと。 恋愛映画の爽やかヒーロー意識してるの? そう思うほど、清潔感ある爽やかな男の子。 「……全部持ってるよ」 ……苦手なんだ、こういう八方美人タイプ。 親切なのは始めだけでさ。