指先からwas唇からlove【再公開】


写真を選ぶなんて気分じゃなくなった私は、

「槇ちゃん、ゴメン、ちょっと用事思い出して」


視聴覚室を出て、海也と待ち合わせしてる体育館裏へと、時間より早く向かった。


……どうしよう。

きっと、あれ。

亜美ちゃんも見ちゃうよ。






鞄を置いて、しきりにスマホを弄りながら時間を潰す。




……トントントントン!


部活、恐らくバスケやバレーの床を鳴らす音が外まで響いて、私の居心地を悪くする。


今さら部活動しようにもできないけど、

中学の間に何か夢中になりたかったな。


……でも、私には海也がいるし。

部活動なんてしてたら、ますます会える時間なくなっちゃう。

これでちょうどいいんだよ。

高校も、きっと、どこかには入れるし。

出来たら、海也と同じ学校……。



そんなこと考えていたら、


「遥香」


海也がやって来た。



「遅くなってごめん」



手にはコーヒー牛乳がふたつ。


「ありがとう」


一つを渡された。



「先生に呼び出されて怒られたの?」


最近はとても真面目になった海也。
髪の毛位しか違反してないと思うけど。




「やっぱ、俺ってそんなイメージ?」


白い歯を見せて笑う海也は、何となくご機嫌。



「……さっき言われたのは、中体連の3000メートルに出てみないかって」


「え?」



「スポーツテストの結果と、マラソン練習のタイムから、やれるんじゃないかって声かけられた」


コーヒー牛乳を飲みながら、まっすぐ前を見て話してくれた海也は、また少し大人に見えた。