そんな出来事から数日経ったある日―
移動教室で1年の教室前を通ると、俺を見たある女の子が明らかに挙動不審な動きをしていた。
「おい。あの子、もしかしておれに気があるんじゃね?」
隣にいた大翔がニヤニヤしながら俺に言ってきた。
あぁなんだ。大翔を見ていたのか。
俺、なんか恥ずい。
「え、あの人?本当に?先輩じゃん。」
挙動不審な女の子は友達と思われる子の後ろに隠れて大翔をチラチラ見ていた。
「あの、スミマセン。」
俺達の前に現れたのは、その友達と思われるポニーテールの女の子だった。
「友達が先輩に一言伝えたいことがあるそうなので、少しだけ時間頂けますか?」
その子はちょっと気が強そうな感じだ。
「大翔、俺先行ってんぞ。」
「お、おう。」
大翔はちょっと嬉しそうに歩みを止めたが、
「いや、用があるのはそちらの先輩なんですが。」
ポニーテールの女の子は顔色ひとつ変えずに俺を指名した。
「お、おれ先行ってるよ。」
恥ずかしさで真っ赤になりながら足早で去って行く大翔。
その気持ち、よく分かるよ。
「何?あんま時間ないから手短に頼むよ。」
「はい。…小乃美、こっちおいで。」
ポニーテールの子が誰かを手招きすると、さっきの挙動不審な女の子が扉の蔭からひょこっと顔を出した。
その動作は、まるで小動物のようだ。
「あ、あの、この間は本当にごめんなさい!!」
女の子は俺の前に来ると、突然頭を下げた。
…けど、謝られるようなこと、俺したか?
「ごめん。君、誰?」
「ふぇ?」
俺の言葉が意外だったらしく、女の子は顔を上げて俺の顔をじっと見た。
「覚えて、ないんですか?校舎裏でのこと…」
「校舎裏?」
…………
………………あっ
「もしかして、あの時降ってきた子?」
そう言った瞬間、女の子の顔は真っ赤に染まった。
「覚えてないなら思い出させなきゃいいのに。」
隣にいたお友達の鋭いツッコミが、なせかツボに入ってしまった。
「アハハ、確かに。」
「で、でも…」
「気にしてないよ。ありがと。わざわざ謝りに来てくれて。」
俺はそう言うと、その場を去った。

