助けてください。
誰か、助けてください。
「脳腫瘍……死ぬの?」
死にたくないよ。
「私が死んだらお母さん悲しむよね?」
陽くんもきっと。
好きな人を悲しませるなんて
「絶対嫌だ!!」
陽くんには私以外にもいい人がいるよね?
「もう陽くんの傍には居られないよ。」
奏ちゃん……
無性に奏ちゃんの声が聞きたくなった。
誰にも言えないこの胸の内をさらけ出して楽になりたかった。
プルルル……プルルル……ガチャ
「はい、もしもし夕?どうした?」
「ウッ……ヒック……奏ちゃん。」
「え?何かあった?陽くんと喧嘩でもした?」
「ひ、陽くんは優しいから、ヒック、喧嘩なんてしないよ。ヒック……。」
「どうした?」
奏ちゃん……ごめんね?こんなこと奏ちゃんにしか言えないんだ。悲しませるってわかってるのに。
「……わ、私ね、脳腫瘍なんだって。死んじゃうかもしれないんだって……ヒック……ウッアァー。死にたくないよー。」
「夕が……そんな!嘘だよね?いや、夕が嘘つくわけ無いか。」
「奏ちゃん、ごめんね?私ね、陽くんと、ウッ……陽くんと別れようと思うんだ。」
「なんで!?」
「陽くんが悲しんでる姿なんて……ウッ……ヒック……好きな人を悲しませるなんてそんなの、嫌だよ!!」
「……夕はそれでいいの?悲しまない?」
悲しいけど……
「好きな人を、陽くんを傷つけるよりマシだよ。」
それが私の覚悟だった。
「そっか……。お見舞、行くから病院教えてね。」
「うん。」
奏ちゃんが、いるから私は、最期まで生きてみるよ。