「最後に金賞は、……七瀬 夕さんです。」
「……え?」
パチパチパチ!!
「夕!すげー!!」
「夕ちゃん、前行かないと!!」
涙が溢れてきた。
固まる私を見て、陽は車椅子を押そうとした。
「待って!……歩きたい。先生、お願いします!!歩かせてください。」
「……行っておいで。陽くん、頼んだよ。」
「はい!!」
私は、陽に支えられながらゆっくりと1歩1歩前に進んでいった。
「大丈夫ですか?」
「はい!!」
「それでは、感想頂けますか?」
私は、司会の方からマイクを受け取った。
「えっと……なんか夢みたいです。自分が金賞って。実は私は、この絵を描いた後脳腫瘍と診断され、今では自力で歩くことも出来ません。今、隣で私を支えてくれる人がいるから、私は立っていられます。」
横を見ると、陽が頬を赤らめながら優しく微笑んでいた。
「この絵は、体育祭で優勝した時を描いたものです。実は、何枚かあった下描きの中からクラスのみんなに選んで貰いました。……私が金賞を取れたのもみんなのおかげなんです。それに今日、ここに来れたのも。」
……ありがとう、みんな。
涙を堪えながら語り続けた。
「実は、本当は主治医の先生に反対されたんです、今日ここに来ること。それに私も無理だと思ってました。
……行きたくて行きたくて涙が溢れました。
そしたらクラスのみんなが主治医の先生にお願いしてくれて、主治医の先生が付き添うという形で来ることが出来ました。
……私の周りには、暖かい人が沢山います。きっと、皆さんの周りにもいっぱいいます。それを忘れないで下さい。
最後に私は、これからも絵を描いて生きます。」



