「僕の生徒で1人、どうしても休学しなければいけない生徒がいて、その生徒の作品をコンクールに出させていただきたいんです。……うちの高校名を付けて。」
あの絵に学校名が無かったら、空想になってしまう。ちゃんとあの情景があったとするためにも。
「どうして?個人でも出せるぞ。」
「個人で出した場合、高校部門では無いですよね?一般部門に応募することになりますよね?」
「あぁ。」
「彼女の絵は、一般部門では、ダメだからです。」
一般部門じゃ……。
「彼女は、なぜ休学しなければいけないんだ?」
「っ……。病気と闘うためです。」
「…それは、命に関わるものなのか?」
「……はい。」
羽柴先生は、少し考え込むと、
「規定では、高等学校に籍を置くものだ。休学でも、籍はあるだろう。……出して構わんぞ。責任は俺が取ろう。」
「っ!!ありがとうございますっ!!」
「その子に伝えてくれ。君の絵を楽しみにしている、と。」
「はい、分かりましたっ!!」
羽柴先生……。
この人が七瀬の運命を変える一人だとは、思いもしなかった。