奏ちゃん……。気を使ってくれたんだね。
「富岡先生に聞いたんだ。夕は、何処にいるのかって。」
「え?」
もしかして、全部話しちゃったんじゃ……。
「そしたら、先生は夕の退学届を出したんだ。そして、動揺していた俺たちに、こう言ったんだ。」
「『俺がまだこれを持ってるってことは、まだ退学したわけじゃない。』って。」
「え?……どういうこと?退学したわけじゃないって。それに、俺たちって?」
訳が分からなかった。
「休学ってことになってる。……実は、安田も一緒に聞いたんだ。それで2人で夕のことを探してた。」
「探す……って。」
「やっと見つけた。」
そう言うと、また抱きしめた。
久しぶりの彼の温もりが、優しかった。
私は、ふと不安になった。
「ねぇ、先生から全部聞いたの?」
「聞いてないよ。先生は、夕は人を癒す場所にいるって言っただけ。」
ならば、彼を離してあげなきゃ。
「これが最後のお願いです。別れて下さい。」
君を悲しませないために。



