不条理カウントダウン



 通話を終えて、スマホをポケットにしまう。


力が抜けて、ぼくは玄関でうずくまった。


背後に、筑前煮が湯気を立てるキッチンがある。


炊飯器のスイッチを入れないといけない。


キッチンの向こう側の部屋では、麗と朝綺が、くすくすと笑い合っている。


時が止まればいいのに、と思う。


朝綺も藤原さんも生きている今のままがいい。



 ぼくは天井を見上げた。


眼鏡越しの白い天井が、熱く滲【にじ】みそうになっている。


ぼくは両眼に力を込めた。


泣くまい、と念じた。



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不条理カウントダウン





☆.。.:*・゜



ヘルパーの仕事に就いている弟の実話をベースに。
私が未来時制で『ログイン/異世界ゲームシリーズ』を書くことにしたきっかけ。

第50回北日本文学賞2次選考通過。


2016.02.26