メールを確認すると、手が空いたら藤原さんの奥さんに電話してほしい、との指示だった。


携帯電話の番号が併記されている。


ぼくは朝綺に断りを入れて、玄関で電話をかけた。


コールを聞く間、スニーカーに両足を突っ込んで、布地の踵を潰しながら足踏みをする。



 もしもし、と電話の向こうに女性の声が現れた。


藤原さんの奥さん本人なのか、一瞬、迷う。


普段の快活な印象とは程遠い声音だった。


ぼくが名乗ると、ああと嘆息して、彼女の口調に少し力がこもった。


ご連絡ありがとうございます、と告げる声は、確かに奥さんのものだ。