熱に浮かされた夢の中で彼に会ったせいだ。


朝綺にも会った。


藤原さんにも会った。


夢の中で、ぼくも彼らも倒れ伏したまま動くことができずに、ぼくは無力感に打ちひしがれた。


ぼくが彼らを助け起こさないといけないのに、体が動かないなんて。



 ぼくは一つかぶりを振って、麗に笑ってみせた。



「心配かけて、悪かったな。大丈夫だよ。今日の夜は遅くなるけど、それでよかったら、ぼくが何か作るから」



 麗は黙ってうなずいた。


実家では家事をしたことがなかった麗は、この数日で洗濯機の使い方を覚えた。


ぼくがほしいと言った食べ物や飲み物は、コンビニやドラッグストアで買ってきてくれた。


後になって考えると、そんな簡単な買い物でさえ、引きこもりがちの麗にとっては冒険だっただろう。


よくぞ家出なんかできたものだと思う。


ぼくの変調を聞いて出てきてくれたのだから、兄として純粋に嬉しかった。