全身の筋力を失っていく筋ジストロフィー患者は、


いずれ心肺機能も衰えて、機械の力を借りなければ生命を維持できなくなる。


根本的な治療法は、いまだ確立されていない。


この難病を持って生まれた彼らは、たいてい二十代で亡くなってしまう。



 一年くらい前、ぼくが目の前で亡くした利用者さんも、デュシェンヌ型の筋ジストロフィーを患っていた。


彼は、ぼくと同い年だった。



 その日の彼は、少し体調が悪い、おなかの具合がよくない、と言っていた。


でも、気のせいかもしれない、とも笑っていた。


彼はもともとおなかを下しやすくて、まあ便秘よりはいいよね、と冗談めかすことがあった。


腹筋が弱った体には、勝手に出て行ってくれるほうが助かるから、と。


それにウォシュレットで洗いやすいしね、とも。