【心音side】
時計の針が夜の11時を回ったころ。
どうしても甘いものが食べたくなったあたしは、桜河の敷地のすぐ横にあるコンビニに向かうことにした。
靴下を履いて、上着を羽織り、靴を履く。
成田先輩の部屋の前を通る時、何やら少し騒がしい気もしたけど気にせずあたしは外に出た。
「……やっぱり少し冷えるな…」
秋の終わりも近づき、外の気温は着々と下がっていく。
15分くらい歩き、コンビニにたどり着いたあたしはお目当てのスイーツを手にレジへ。
そのまま寮に帰るだけ。
───────のはずだったんだ。
コンビニから出ると冷たい風があたしの髪を揺らした。
「早く帰って布団の中に入ろう……」
そう呟いて桜河に戻ろうとした時。
「───────────みお?」
後ろから、誰かがあたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。
声の正体を確認しようとあたしは後ろを振り返る。
この時、振り返らなければよかったなって。
そう思ったって仕方のないことだけど…。
振り返った先には暗くてよくは見えないけど、少しだけ見覚えのあるシルエットがあった。
でも…なんで?
どうしてここにいるの……?