黙って俺のモノになれ【上】


それに…俺のライバルはきっと、楓たちだけじゃない。


例えば、ここでこうやってすれ違う男子生徒たち。


行く人のほとんどが心音ちゃんを見て、微笑んでる。


……だけどそれに気づくことなくバンドに集中してる様子の心音ちゃん…。


心音ちゃんの鈍感加減には本当参るよ…。


いや、こんなに真剣にバンドを楽しんでくれるとそりゃ旭輝も喜ぶと思うけどさ。


やっぱりちょっと………妬ける。


心狭いんだなー…俺。



「─────んぱい。先輩…?」



「っあ、ごめん。どうかした?」



「あ、いや。バンド終わっちゃったなって思って……」



俺がぐるぐる色んな事考えてた間にどうやらバンドは終わってしまったらしく。


そんな俺を変に思ったのか首を少しだけかしげている心音ちゃん。



「……面白かったね。バンド!」



「はいっ…!」



とか言ってほとんど見れてなかったんだけどね。


ごめん、旭輝……。


後で感想聞かれたら…適当にごまかしとこう。



「このまま、ここにいますか?」



「心音ちゃんはどうしたい?」



「あたしは…少し喉が乾きました……」



「おっけ。じゃ買いに行く?」



「…それが、お金忘れちゃったので教室に水筒を取りに行ってもいいですか…?」



「あ、じゃー俺が買ってあげる。ね?」



「…で、でも………」



「いいからいいから。先輩には従っとくもんだよ?」



なんて、少し強引すぎたかな。


でもジュースくらいは、奢らせて。



「じゃあ、すいません。ご馳走様です…」



「うん。じゃあ行こう」



「はい」



自然と離れる手。


それに寂しさを感じながらも飲み物を売っているグラウンドへと向かった。