【楓side】



俺には妹がいて。


小さい頃から妹の好きなぬいぐるみのために祭りに行けば必ず射的をやってきた。


繰り返しやれば、上達もするわけで。


今ではその射的はほぼ百発百中。


けど…………。



「ほら、これ。さっきのぬいぐるみだ」



「…あっ!ありがとうございます…!本当に嬉しいです…。あたし、このキャラクター大好きなんです…!」



これ以上にないくらい大喜びをする柊。


射的でとってここまで喜ばれたのは初めてだな…。


それに普段は遠慮がちなこいつのこんな表情やテンションは見ることねーから、ちょっと新鮮だ。


やって良かった。


いつも思わないわけじゃないけど、今日は1段とそう思えた。




「じゃあそろそろここ出るか?」



「そうですね」



こうして俺たちは縁日を出た。














特に会話もないまま、行く宛もなく2人で並んで歩く。


隣では柊が先ほど射的で取ったぬいぐるみを嬉しそうに抱いている。


何か……可愛いな、こいつ。


柊が泣き出した時は本当、どうしようかと思ったけど。


何とか、いつもの笑顔に戻ったみたいで俺も安心…だな。