「せ、先輩?」
「…悪い。お前泣いてたから」
そう言われて初めて、自分の頬を伝うそれに気づいた。
「…あ、あたし……………」
「いいから何も喋るな。泣きたい時は泣けばいい」
先輩のそんな言葉と同時にふわりと包まれる感覚がした。
男の人にこんな風にされるなんて相手が誰であろうと嫌なはずなのに…。
何故か先輩の腕の中はひどく心地よくて。
それが余計にお父さんを連想させて。
あたしはお父さんがいなくなって以来、初めて我を忘れるくらいに泣いてしまった。
その間、先輩は何も言わず傍にいてくれて…。
落ち着きを取り戻したあたしは数分後、ようやく先輩から身体を離した。
「もう大丈夫か?」
「はい…。迷惑かけてすいません…」
「気にするな。誰だって泣きたい時くらいあるだろ」
「…はい」
「じゃ、そろそろ戻ろう。そのまま縁日でいいのか?嫌なら場所を…」
「いえ、そのまま縁日に行かせてください」
「…分かった」
階段を1段ずつ、並んで歩く。
もう少しであの賑やかな場所に戻る。
そんな時、西宮先輩は静かに口を開いた。
「……柊。俺はお前が泣いた理由を聞くつもりもないし、問いただしたりもしない。ただ無理だけはするな。辛い時は辛いって人を頼れ。お前が思ってる以上に周りのやつらは皆、お前のこと心配してるから」



