【心音side】




「じゃ、頼みます楓さん」



律儀に西宮先輩との待ち合わせ場所まで送ってくれた朝霧くんを見送り、今度は西宮先輩と歩き出す。


相変わらず、会話はほとんどないけど…


それでもどこか安心感を覚えているのは慣れ…なのかな。






そして思い出すのは朝霧くんのあの少年のようなあどけない笑顔。


いつものような意地悪な笑い方でもない。


どこか人を馬鹿にしたような冷たい笑みでもない。


あの笑顔は……………



─────朝霧くんの笑顔そのものだった。



少なくともあたしはそう感じた…。


それと同時に生まれた疑問。






どうしてあんな綺麗な笑顔を持っているのに彼は───────────



「……柊?大丈夫か?」



…っ!いけない…。


今は西宮先輩といるんだから考えるのはやめなきゃ…!



「す、すいません…。大丈夫です」



「そうか、ならいい。それで…お前はどっか入りたいとこねーのか?」



「えっと…もう少し見てみてもいいですか?」



「あぁ」



「ありがとうございます…!」



そしてまた、沈黙の静かな空気が訪れる。


あたしはそんな沈黙を気にもとめず、ずらりと並ぶたくさんのお店を眺めた。