【奏夢side】
「────あ、朝霧くん…。あの、腕がい、痛いです…………」
心音のそんな声で俺は我に返った。
気づいたらお化け屋敷を出て、出し物をしていない校舎の廊下に来てた。
「…わりぃ。強く引きすぎた」
「い、いえ…………………」
まさか、とは思ったけど。
やっぱりこいつ、他の奴とは違ぇ。
俺がそう思い始めたのは金を忘れたあいつに2つ目の物を買ってやった時だった。
俺があれほど
『男が差し出すもんは素直に受け取っとけ』
って言ったのに受け取らねぇし、最初はよく思われたくてぶってんのかなとか思ってたけど。
『本当ならあたしが奢ってあげるべきなんです。いつもいつも面倒な護衛してくださって…』
とか
『朝霧くんの好意も、お金持ちだって事もちゃんと分かってるつもりです…。だけど…だからって何でも人に頼るのはあたしが嫌なんです。ただでさえ、いつも迷惑かけてるのに…。それに、男性だとか女性だとか相手が…朝霧くんだから…お金を持ってるからってそういう風に人を見て判断する人を見るのは心が痛いから…。せめてあたしは平等な目線で人と付き合っていきたいんです…。なんて、少し前まで男の人ってだけで怯えてたあたしが言えることじゃないんですけどね…』
とかあまりにも真面目に言うから、マジなのかと思い始めて。
今までに会ったことないタイプで正直何度も言葉に詰まったっつーか、俺らしくいられなかったっつーか。