黙って俺のモノになれ【上】



『それがさ。これ向こうに運ばなきゃなんねぇんだけど、心音が戻ってから手があいてるひとがいなくて。悪いんだけど、これ持ってってくんね?』



そう言ってモノの乗ったトレーを渡してくる伊織。



『────は?あいついつの間に戻ったんだよ』



けど、俺が無意識に反応したのはそこだった。



『あぁ、ついさっき戻ってもらったけど…。何か伝え忘れとかあったか?』



『いや、何でもねー。とりあえずこれ、持ってきゃいんだろ』



『……?…じゃ、まー頼むわ』



伊織の返事を聞いて、俺は教室を出た。













本当、何であの女の事に反応したのか分かんねー…。


でもたぶん、あいつの意外な姿見たから過剰反応になっただけ。


それ以外に理由なんて見つかんねーし。


……なのに。


妙に納得出来ねー自分がいた。


………あー、もう。本当何なんだよ!



────そんな時だった。



『俺らが受付したのはおねーさん』



『あ、あの…、そ、それは出来ません……』



“あの場面”に遭遇したのは。


普段の俺なら何も見えてねぇとでも言うように素通りするし。


もちろんこの時だってそうするはずだった。


俺には関係ねぇー、って。


けど、あいつが無理やり連れていかれそうになった瞬間、



『こいつに何か用ですか』



考えるより先に身体が勝手に動いてたんだ。