『それがさ。これ向こうに運ばなきゃなんねぇんだけど、心音が戻ってから手があいてるひとがいなくて。悪いんだけど、これ持ってってくんね?』
そう言ってモノの乗ったトレーを渡してくる伊織。
『────は?あいついつの間に戻ったんだよ』
けど、俺が無意識に反応したのはそこだった。
『あぁ、ついさっき戻ってもらったけど…。何か伝え忘れとかあったか?』
『いや、何でもねー。とりあえずこれ、持ってきゃいんだろ』
『……?…じゃ、まー頼むわ』
伊織の返事を聞いて、俺は教室を出た。
本当、何であの女の事に反応したのか分かんねー…。
でもたぶん、あいつの意外な姿見たから過剰反応になっただけ。
それ以外に理由なんて見つかんねーし。
……なのに。
妙に納得出来ねー自分がいた。
………あー、もう。本当何なんだよ!
────そんな時だった。
『俺らが受付したのはおねーさん』
『あ、あの…、そ、それは出来ません……』
“あの場面”に遭遇したのは。
普段の俺なら何も見えてねぇとでも言うように素通りするし。
もちろんこの時だってそうするはずだった。
俺には関係ねぇー、って。
けど、あいつが無理やり連れていかれそうになった瞬間、
『こいつに何か用ですか』
考えるより先に身体が勝手に動いてたんだ。



